「実質二回」はどういうことかというと、二回目の四コウが出来たとき、優勢だった相手が無勝負にするか、どこかの両コウゆずるか、秒読まれながら考えているうち、黒4にとるべきところ、間違って白3の横を取り返したようなことをしてしまったため、僕の反則勝ちになったからです。
むかし研究会で呉清源先生に教えていただいたとき、三コウ無勝負になったことがある、そのとき呉先生は「初めてだ」と言って喜んでいました。無勝負の碁は一生に一度出来るかどうかぐらい珍しい、そういう意味でそれが出来るときはなんとなくおめでたい、というふんいきになる。
それなら「またやっちゃった」って事もないと思われそうですが、無勝負もめったに出来ないからいいのであって、僕みたいに五年の間に三回も立て続けに出来ると、ちょっと気が引けるのです。
一回目の無勝負のときはテレビ対局でした。四コウはめずらしいということで、無勝負の碁は放送されたのですが、打ち直しの碁を放送する枠がない。日を改めて、日本棋院で誰にも知れず打ち直しの対局したのですが、事務局には余計な仕事。一局打つのにも立会いから記録、勝負確認係など、たくさんの人手がいる。無勝負って意外と迷惑かけるもんなんだなと思ったものでした。そのため、二回目の四コウもテレビ棋戦でしたが、無勝負にならなかったことにちょっとホッとした。そのかわりもっと妙な結末になったものだから、もう無勝負はやりたくないと、ほかの人から見れば贅沢な考えを持っていた。
そこで、こんどの無勝負だが、テレビ棋戦ではない。富士通の予選で、持ち時間一時間、一分単位で五分の秒読み。午前十時に打って、勝ち上がったら、午後二時半にもう一局打つ、という対局スケジュールになっている。
僕は午前の対局で幸い勝ちあがって、午後にそれを「やっちゃった」のだが、その午前の対局がなんと、午後二時過ぎまで打っていた。普通遅くなっても一時半ごろには終わるものですが、コウをやっているうちにそういう時間になった。「メイエンも碁が好きだね」と先輩にひやかされたものでした。
頭がフラフラぎみで二局目がはじまったが、悪いことに相手が若い上に強い。 |